射精の学習実践・高校
男と女で疑問を出し合うちょうちん持ち授業
関口 久志 Sekiguchi Hisashi 高校教諭
 
 
 ■両性で交流するグループ授業
 

 「わかりません」「前の人と一緒です」
 これが教師の質問に答えるときの多くの生徒の一般的な言葉である。小学校から、いわゆる「落ちこぼれ」をつくり、効率だけを求めてきた「詰め込み教育」や「受験偏重教育」の結果であるが、正解だけを与え、次々と進んでいくような授業には、当然のことながら生徒間あるいは教師・生徒間の交流が入り込む余地はない。さらに、近年の教育政策を見ると、高校においては総合学科の設置、飛び級制の導入、自主活動の削減など、学びの共同体である学校・ホームルームを解体する方向で進められ、ますます生徒が孤立化させられる傾向にある。
 このような状況で、高校の授業は保健も含め、本当に成立しにくくなっている。しかし、本来、保健の授業は「生存権レベルで人間をとらえるゆえに、社会科以上に社会を照射する力を持っている」と言える。
 私もこの視点から、生徒同士の交流を重視した「子どもとともにつくり」「子ども同士で学び合う」授業に変えていくように努力している。

 私の保健の授業では、三〜五人くらいのグループに分かれて、生徒同士で意見や考えを出し合い、それをグループごとにまとめて発表する方式をとっている。話し合いの課題は、できるだけ正解というものがなかったり、現代的関心事になったりするように心がけている。このことによって、「わかりません」「知りません」などは、皆無になったといってよい。
 しかしながら、わが校は共学でありながら体育との関係で保健は両性別講座に分かれて行われ、両性間の交流がないという欠点があった。それを逆手にとって考えたのが、女子講座がグループで考えた疑問・質問を男子講座に答えてもらう(その逆もある)名づけて「女と男のちょうちん持ち授業」である。
 方法として、質問・答えとも、匿名でOK、アトランダム回収とした。この点などから、面と向かって言えない本音がポンポン出て、大笑いになったり、新しい発見があったり、自分たちの疑問・質問に対して、異性の答えを私が読み上げるときなどには、シーンと静まりかえったりした。
 このように、両性が直接話し合いをする場合は「照れ」などでなかなか成立しにくい面も克服され、日本の文化では少ない「両性の意見・考えの交流」に大いに役立ってくれている。

 
 ■回数が多いとバカになる?
 

 このシリーズの授業計画は、
・ 一時間目----両性の生理(月経・射精)、自慰について考える
・ 二時間目----男性の自慰のための道具・ファンタジーとしてのアダルトビデオを考える
・三時間目----男性の自慰文化で歪められる性交間から挿入にこだわらない性交を考える
 であるが、今回は紙面の都合から一時間目だけを取りあげた。
 この授業ではあらかじめ女子講座からとっておいた射精・自慰に関する疑問・質問アンケート(《1》〜《16》)に答えてもらい、それを私が読み上げ、解説して授業を進めた。
 プライバシーを尊重して、質問には個人の答えられる範囲で答えてくれるように要請したが、教師のつくるアンケートよりよほど真剣に答えてくれた。以下、授業の様子である。

《1》射精って(全体的に)どんな感じ? どういう気分・気持ちになるのですか?
 男子の主な答え 「もうたまらん」「気分爽快」「この世をひっくり返せる力を得る」「気持ちいい。でもやり終わったら、なんでこんなことしているのかと思って恥ずかしくなる」「天にも昇る気分」「すんごく気持ちいい。でもやり終わったあとは自分があほらしくなり、オレって何やってんやろと思う」「気持ちいい、女にかけたくなる」「いやな気分」。全員二二名の講座でいろんな表現ながら、快感と答えた男子が二一人。あとの一人は「いやな気分」と答えている。
 私の解説 女子は男子の射精がどんなに快感があるか、そして射精のあとに虚脱感があることを、これらの男子の本当に素直ですてきな表現によって、理解してくれたようである。この点で女子の月経と大きな差があること、それがその後の自慰(性)行動においても、個人差はあるが、男子の積極性を生む一因となることを説明した。と同時に、「(精液を)女にかけたくなる」など攻撃的な「性」の回答にはアダルトビデオやポルノ記事の影響が見られること。ただ一人「いやな気分」と答えた男子の原因をあくまで推測として「罪悪感」や「完全包茎や病気になる苦痛」、あるいは「少数だが性同一性障害からくる嫌悪感」などの観点から説明した。

《2》射精の量は一回どれくらいなんですか?
 
男子の主な答え
 「そのときによる」や「はかったことがないから、わからない」が最も多かったが、なかには、誇大視しているのか単位を間違っているのか、「三リットル」「一、五リットル」「五〇〇CC」などの答えもあり、みんなで笑ってしまった。一番わかりやすかったのは「手のひらに受けれるぐらい」というものであった。
 私の解説 一般的に二〜四CC(その中に精子が二億から三億)と言われるが、これは、個人差があることや同じ個人でもその日のそのときによって違うことを説明した。

《3》出てる瞬間はわかるのですか?
 
男子の主な答え
 「わかる」「見える」「当然」という答えが大半であったが、そのときを描写して「シコっていてて、出るぞーときて、ドピュッって(おっとティッシュ……)」という答えもあり大笑いになった。
 私の解説
 出るという感覚があまりなく、快感を伴わない女子の月経と射精には大きな違いがあり、射精の瞬間の貫くような快感は、月経とは根本的に違うことを説明した。

《4》どの程度の刺激で起こるのですか?
 
男子の主な答え
 「人による」が多かったが「三〜四分こする」「九五万パワー(筋肉マン)」「自慰のときは結構がんばらなあかん」「ちょっとしたことで」などがあった。
 私の解説
 これも人によることやそのときによって違うこと、また刺激を言葉で表現しにくいことを説明した。

《5》我慢しようと思えばできますか? 射精しなかったらどんな気分になるの?
 男子の主な答え 「できる」が大まかに分けて一八人で、「やりたいとき我慢したらうっとうしくなるけれど、何かをしている間に忘れる」「できるけどやってしまう」や、我慢の意味を自慰行為の途中と勘違いした「できるけど出るラインをこえるととめられない」という答えであった。一方で「我慢できない」も三人おり、「とてもじゃないけどムリだ。キレる」「三日が限界、イライラしてくる」などの答えがあった。
 私の解説 「精子は三日で満杯にたまる」という、迷信となってほしい言葉がいまだに信じられているが、実際は精子は分解吸収される。たまることを理由にした「男は我慢できない」という男性本位の間違った性情報が多くあり、それを根拠に「我慢できないからやらせろ」などという男がいたりするが、それは最悪であること。
 また勃起から射精と続く貫くような快感との葛藤は、男性本位の情報の刷り込みと混ぜ合わされ、男性にとって女子の月経とは違った困惑があることなどを説明した。

《6》最初のころから自慰は自分でコントロールできるものなのですか?
 男子の主な答え 「初めっからだれでもいつでもできるが、ぼくの場合、それに耐える精神が必要である」「よくおぼえていない」などであった。全体的には男子二二名のうち、コントロールできる=一五人、わからない=五人、コントロールできない=二人であった。
 私の解説 人間は学んでおぼえていく動物。最初からコントロールはできないし、また自慰の仕方もわかららない。メディアや友達の情報や自分の快感をより増していく感覚で方法を覚えたりすることで自慰・射精をコントロールできるようになること、また男性の射精は女性の月経と違って随意性が重要であることから、自慰で射精をコントロールすることを覚えるのは男性にとって大きな意義があることを説明した。

《7》夢精があった朝、どんな感じですか? あとの処理はどうするの?
 男子の主な答え 「いやだった。自分で処理する」「びっくらこいた。洗濯機へGO!」「ベッドの下へパンツを隠す」「ションベンもらした感じ、ドライヤーでOKよ」。全体的には最初から自慰が七人、わからないを合わせると過半数を超え、最近の傾向を示した。
 私の解説 夢精に関しても知っておかなければ、おねしょと勘違いしたりすること。夢精は「母親の引力圏からの脱出」とも言われ「ぬれたパンツ」は母親・家族には知られたくないこと、ドライヤーで乾かしても固まってしまってわかるし、洗濯機に入れてもパンツの数が増えることでわかってしまうこと。できれば家族に射精の意義を理解してもらうと同時に、「自立」のため自分で下着くらいは洗うようにしたいこと。ちなみに「自分の下着はだれが洗うか」調査したところ、全員が「母親」という答えであった。せめてぬれた部分をつまみ洗いぐらいしてからドライヤーで乾かすことをすすめた。

 

“NEXT”をクリックすると、
自慰・夢精・勃起などに関する質問《8》〜《16》がご覧になれます