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性教協声明

あらゆる人の人権が保障される社会を実現するための性教育を共に

■あらゆる人の人権が保障される社会を実現するための性教育を共に
  
 2020年9月、白石正輝足立区議会議員(自民党)から、性的マイノリティの地位を貶め、生存を脅かす発想にもとづく差別発言、および多様な生き方を制限するような教育を求める発言があったことが明らかになりました。

 その内容は、「こんなことはあり得ないことですけれども」と言いながら「日本人が全部L(レズビアン)、日本人が男は全部G(ゲイ)、次の世代生まれますか」、「そのことを考えたときに、性の多様性とか性を尊重する、(中略)そのことはわかりますけども、これを学校教育の中で取り上げたときには、普通の結婚をして、普通に子どもを産んで、普通に子どもを育てることが、いかに人間にとって大切なことであるか」、「子どもを産んで、子どもを育てることは、経済的、社会的にも大変かもしれないけども本当にすばらしいことなんだ、そのことを教育の場で子どもたちにしっかり教えないと、いやLだってGだって法律で守られてるじゃないかなんていうような話になったんでは、足立区は滅んでしまう」というものでした(足立区議会令和2年第3回定例会(2020年9月25日)本会議録画配信より)。

 あえて「あり得ない」想定をすることでレズビアンとゲイの存在をあたかも"害悪"であるかのように位置づけ、学校教育の中でレズビアンやゲイの人権保障の話をすることを否定するこれらの発言は人権侵害です。また、「少子化社会対策大綱」(2020年5月)では、「少子化の背景には、経済的な不安定さ、出会いの機会の減少、男女の仕事と子育ての両立の難しさ、家事・育児の負担が依然として女性に偏っている状況、子育て中の孤立感や負担感、子育てや教育にかかる費用負担の重さ、年齢や健康上の理由など、個々人の結婚や出産、子育ての希望の実現を阻む様々な要因」があると示されているにもかかわらず、先の発言は少子化の問題を性的指向と若者の子育て等に関する意識と教育の問題だと歪曲しています。その上で、女性の性と生殖に関する権利を制限する教育を求めるといったことも人権侵害です。

 何度も繰り返されるこういった人権侵害に、私たち一般社団法人"人間と性"教育研究協議会(以下、性教協)の会員はますます心身を削り取られていく思いです。10月20日開催の足立区議会本会議において白石議員が謝罪と発言の撤回をするとのことですが(足立区議会ウェブサイトより)、こういった人権侵害が再び起こらないようにしなければなりません。その実現には教育の力にも期待されるところです。

 性教協は1982年の設立以来、「人類社会のすべての構成員の固有の尊厳と平等で譲ることのできない権利」(世界人権宣言)である人権を性教育の土台に位置づけてきました。個人の尊厳と法の下の平等は日本国憲法第13条および第14条にも明記されています。他者の地位を貶め生存を脅かし、多様な生き方を制限するといった、「すべて国民は(略)差別されない」ことや「公共の福祉」(日本国憲法)に反する言動は、私たちが実践してきた性教育の理念とは相反するものです。

 私たち性教協は、さまざまな性を生きるひとりひとりが自己の性について学び、他者の性について学ぶといった性の学習権、つまり包括的な性教育を受ける権利(性の健康世界学会「性の権利宣言」2014年)が保障されることを求めています。私たちが追求する性教育は、「多様性は、セクシュアリティの基本である」(ユネスコ「国際セクシュアリティ教育ガイダンス」2009年)という子どもおよびおとなを含む私たちの現実を前提に、個人の決定を尊重し、平等で豊かな関係を育み、暴力や差別のない社会を実現するものであることを、ここで改めて確認します。

 いまこそ、あらゆる人の人権が保障される社会を実現するための性教育を共につくっていきましょう。

2020年10月14日

一般社団法人"人間と性"教育研究協議会幹事会
 


  あらゆる人の人権が保障される社会を実現するための性教育を共に(声明PDF版)

 

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